防災

ポータブル電源と太陽光パネルで停電に備える。現実的にできることの範囲

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この記事の要点: 768Wh+100Wパネルで守れるのは情報・照明・通信まで。フルセットで4日半〜1週間、スマホと照明に絞れば2週間規模です。

停電への備えとしてポータブル電源と太陽光発電パネルの購入を検討している方に向けて、実際に何がどのくらい動かせるのかを整理します。筆者は太陽光発電業界で15年以上働くエンジニアで、賃貸住宅のベランダに容量768Whのポータブル電源と100Wの太陽光発電パネルを設置し、2025年1月から使い続けています。この記事の数値はその構成を前提にしたものです。

結論。守れるのは情報・照明・通信までです

先に結論を書きます。768Whクラスのポータブル電源と100Wの太陽光発電パネルで停電時に守れるのは、スマートフォンとタブレットの充電、LED照明、夏であれば空調服(ファンを内蔵した作業着)のバッテリー充電までです。スマートフォンの充電だけに絞れば約22日分になりますが、タブレットや空調服まで含めると本体の電気だけで約4.5日分、太陽光での再充電を足しても曇天が続けば1週間前後という規模です。

一方で、冷蔵庫やエアコンは容量が足りず、最初から対象外と考えるのが現実的です。医療機器は、この種の計算で電源を選んではいけない領域です。理由は後述します。

停電は「起こるか」ではなく「何日続くか」で考えます

過去の大規模停電の復旧期間を3件挙げます。2026年7月28日の令和8年熊本地震(マグニチュード7.1・最大震度7)では、熊本県内で最大約4万8,500戸が停電し、地震に関連する停電の解消までおおむね4日かかっています(内閣府の被害状況報告による)。2019年の令和元年台風15号では千葉県内の復旧がおおむね2週間、2024年の令和6年能登半島地震では道路の寸断により約1ヶ月に及んだ地区があります(いずれも経済産業省の資料による)。

公的に推奨されている備蓄は食料・飲料水で最低3日分、大規模災害を想定する場合は1週間分です(首相官邸の防災ページによる)。電源に関する公的推奨は乾電池・モバイルバッテリー・携帯ラジオまでで、ポータブル電源とソーラーパネルはその上に任意で加える一段という位置づけになります。数時間で復旧する停電ならモバイルバッテリーで足りますので、ポータブル電源が意味を持つのは停電2日目以降と考えられます。

必要な電力量は、使う機器から積み上げます

「スマートフォンを何十回充電できます」という説明は、電池の容量を充電1回分で割っただけの数字です。備えの見積もりとしては、停電時に実際に使う機器から1日の必要量を積み上げる方が実態に合います。筆者の想定は次のとおりです。

  • スマートフォン2台(1日1回の充電): 30Wh
  • タブレット1台(1日1回の充電): 約30Wh
  • 空調服のバッテリー1個(1日1回の充電):
    約70Wh(筆者使用機の定格は14.52V×4,900mAh=71.5Wh)
  • LEDスタンド(6Wを3時間): 18Wh

合計で148Wh/日です。ここで一つ補足があります。ポータブル電源は直流で貯めた電気を交流100Vに変換して家電に渡すため、変換と充放電に損失が出ます。効率を87%とすると、768Whの容量で実際に使えるのは約668Wh相当です。

持ち日数を計算すると、スマートフォン2台だけの最小構成なら 668÷30
で約22日分、上記のフルセットなら約4.5日分となります。同じ電池でも、何を「1日分」に含めるかで22日にも4日半にもなる、というのが容量計算の要点です。

太陽光での再充電は天気に大きく左右されます

100Wのパネルをベランダに南向きで設置した場合、晴天なら1日あたり175Wh程度の発電が目安になります(日射2.5時間相当に損失をまとめた係数0.7を掛けた値です)。フルセットの消費(損失込みで約170Wh/日)に対して、晴天でも収支はほぼ拮抗という水準です。

問題は、停電が晴天時に起こるとは限らないことです。曇りの日の発電量は晴天時の3分の1から10分の1程度に落ちるとされています(パナソニックの公式FAQによる)。良い側の3分の1で見ても約58Wh/日ですので、フルセットでは1日あたり約112Whの赤字となり、768Whの電池は7日弱で尽きる計算です。

延ばす方法は、使い方を絞ることです。タブレットと空調服を使わない日を作れば、スマートフォンと照明で48Wh/日となり、再充電なしでも2週間規模まで延びます。防災の見積もりは、曇天の発電でも収支が回るかどうかで考えるのが安全側と考えています。

最初から「守らない」と決めておくもの

冷蔵庫は768Whクラスには荷が重い機器です。停電時は扉を開けなければ2〜3時間程度は冷気が保たれるとされていますので(パナソニックの案内による)、数日の停電であれば保冷剤とクーラーボックスで守る方が現実的です。

冷暖房は容量の桁が足りません。エアコンの消費電力は数百Wクラスで、768Whでは一晩持ちません。夏の停電の暑さ対策は水分・塩分と空調服が主役で、ポータブル電源の役割は空調服バッテリーの再充電までです。冬はカセットコンロ・湯たんぽ・毛布が主役で、電気は情報と照明に温存します。

医療機器は線引きが明確です。在宅酸素は停電で酸素濃縮装置が止まるため、携帯用酸素ボンベへの切り替えと供給事業者への連絡が基本とされています。人工呼吸器も主治医・機器業者との事前の取り決めが前提です。医療機器の非常用電源をこの記事のような計算で選ばず、必ず主治医と機器レンタル事業者に相談してください。ポータブル電源にできるのは、家族のスマートフォンや照明を引き受けて医療機器用の備えを消耗させないことまでです。

また、スマートフォンを充電できても、基地局側が止まれば通信は通じない可能性があります。受信専用で基地局に依存しない乾電池式の携帯ラジオは、電源の計算とは別枠で持っておくことをおすすめします。

日常で使うことが、そのまま備えの維持になります

筆者の運用は、夜寝る前にコンセントから満充電にし、日中は太陽光で充電しながら家電に使う、というものです。毎晩満充電で夜を迎えるため、照明が必要になる夜間や早朝の停電に対しては残量が厚い状態を保てます。毎日使うこと自体が動作確認と劣化管理を兼ねる点も利点で、押し入れに保管したままの機体は不具合にもリコール情報にも気づきにくいものです。

ただし、日中から就寝前までの時間帯はその日の消費次第で残量が少ないこともありえます。100%の備えにはならない、という限界も含めて理解しておく必要があります。また、台風の接近が分かっている前日は、パネルを室内に取り込みます。強風で飛べば自分の損失では済まず、他人を傷つける加害のリスクになるためです。賃貸住宅のベランダは非常時の避難経路でもありますので、避難ハッチや隣戸との隔て板を塞がない設置が前提になります。

参考(これから機材を揃える方へ)

本文の計算は筆者の768Whクラスの構成が前提ですが、これから備えとして揃えるなら、現行のLFP採用機から選ぶことをお勧めします。ラインナップ例: Anker Solix シリーズ(公式サイト)

※リンクは Anker 公式サイトのアフィリエイトリンクです

まとめ

  • 768Wh+100Wパネルで守れるのは情報・照明・通信と、夏の空調服まで
  • フルセットで4日半から1週間、スマートフォンと照明に絞れば2週間規模
  • 冷蔵庫・冷暖房・医療機器は最初から「守らない」と決めて別の手段を用意する
  • 毎日使う運用が、動作確認と残量維持を兼ねる

容量計算の詳しい過程や実際の設置・運用の記録など、ベランダソーラーの実践記事を
note でも公開しています: ベランダソーラーエンジニアの
note

よくある質問

Q.
768Whのポータブル電源で停電時に何日もちますか?

A.
スマートフォン2台の充電だけに絞れば約22日分、タブレット・空調服・照明を含むフルセットでは約4.5日分です。何を「1日分」に含めるかで大きく変わります。

Q. 停電時に冷蔵庫やエアコンは動かせますか?

A.
768Whクラスには荷が重く、最初から対象外と考えるのが現実的です。冷蔵庫は保冷剤とクーラーボックス、夏の暑さ対策は水分・塩分と空調服が主役になります。

Q. 医療機器の非常用電源に使えますか?

A.
この種の容量計算で電源を選んではいけない領域です。在宅酸素や人工呼吸器は、必ず主治医と機器レンタル事業者に相談してください。

Q. 太陽光で再充電すればずっと使えますか?

A.
100Wパネルで晴天なら1日175Wh程度が目安ですが、曇りの日は3分の1から10分の1程度に落ちるとされています。曇天でも収支が回るかで見積もるのが安全側です。

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