この記事の要点: NGは避難経路・落下・屋内用延長コード・高温放置・リコール品・コンセント接続の6つ。設置前の確認で避けられます。
ベランダに太陽光発電パネルとポータブル電源(持ち運びできる蓄電池)を置く「ベランダソーラー」は、電気工事なしで始められます。一方で、置き場所や使い方を誤ると、火災や落下事故につながりえます。
この記事では、避けるべきことを6項目に整理します。恐怖を煽る意図はありません。公開されている事故情報と制度を根拠に、何を避ければよいかを具体的に書きます。筆者は太陽光発電業界で15年以上働くエンジニアで、自身も賃貸住宅のベランダでパネルとポータブル電源を運用しています。
先にNG6項目の一覧
- 避難ハッチや隔て板を塞ぐ位置に設置する
- 落下対策をしないままパネルを置く
- 屋内用の延長コードやたこ足配線で給電する
- ポータブル電源を高温の場所に放置する・可燃物のそばで充電する
- リコール対象品や素性の分からない製品を使う
- コンセントに差して家の配線へ電気を流す
順に理由を説明します。
NG1:
避難ハッチや隔て板を塞ぐ位置に設置する
マンションやアパートのベランダは、火災などの非常時には避難経路として使われます。避難ハッチ(下の階へ降りるはしご付きの開口部)の上や降下空間に物を置くと避難の妨げになり、降下空間の確保には消防庁告示で技術基準が定められています(出典:
平成8年消防庁告示第2号)。隣戸との隔て板(非常時に蹴破って通る仕切り板)の前も同様です。
パネルや架台の置き場所を決める前に、まずベランダのどこが避難経路にあたるかを確認してください。判断に迷う場合は、所轄の消防署や管理会社に問い合わせるのが確実です。筆者の自宅では、避難ハッチと隔て板のどちらも塞がない位置にエアコン室外機カバーラックを置き、その上にパネルを載せています。
NG2:
落下対策をしないままパネルを置く
太陽光発電パネルは面積が大きく、風を受けやすい形状です。事業用の太陽光発電設備でも、台風の強風によるパネルの飛散・破損や固定金具の緩みが報告されており、NITE(製品評価技術基盤機構。経済産業省所管で製品や設備の事故調査を行う機関)が2025年8月に注意喚起を出しています(出典:
NITE
太陽電池発電設備の台風被害)。
ベランダの手すりに立てかけただけのパネルは、強風で倒れたり飛ばされたりしえます。上層階から落ちれば、下を歩く人に対する加害事故になりかねません。架台ごとストラップやロープで固定すること、台風の接近が予報されている日はあらかじめ室内に取り込むことをおすすめします。ケーブルを外に垂らしたままにしないことも同様です。筆者は、パネルを載せた架台をエアコン室外機カバーラックにストラップで固定しています。
NG3:
屋内用の延長コードやたこ足配線で給電する
NITEの集計では、テーブルタップや延長コードなど配線器具の火災事故は2019〜2023年の5年間で126件あり、2023年の件数は2019年の約2倍に増えています(出典:
NITE
注意喚起
2024-01-25)。たこ足配線は定格(その器具に流してよい電力の上限)を超えやすく、異常発熱から火災に至るおそれが指摘されています(出典:
NITE
テーブルタップ・延長コード)。
加えて、一般的な延長コードは屋内での使用を前提に作られており、雨や結露にさらされるベランダでの常用は想定されていません。プラグ部分に水分やほこりが付くと、トラッキング現象(プラグの刃の間で起こる放電)から発火することがあります。筆者の自宅では、ベランダに配線器具を置かず、エアコンの配管口を利用してパネルのケーブルだけを室内へ引き込み、ポータブル電源は室内の窓際に置いています。配線器具を屋外に持ち出さない構成にしておく方が安全です。
NG4:
ポータブル電源を高温の場所に放置する・可燃物のそばで充電する
ポータブル電源にはリチウムイオン電池が使われています。NITEの集計では、リチウムイオン電池搭載製品の事故は2020〜2024年の5年間で1,860件あり、約85%が火災に至っています。事故は気温が上がる6〜8月に多い傾向も示されています(出典:
NITE
注意喚起
2025-06-26)。東京消防庁管内でも、2024年中にリチウムイオン電池関連の火災が115件発生して過去最多となり、うちポータブル電源によるものが8件、全体の約6割は充電中に発生しています(出典:
東京消防庁
住宅でも注意!リチウムイオン電池関連火災)。
真夏のベランダは高温になります。ポータブル電源の本体は直射日光の当たる屋外に置かないでください。これは発電効率の話ではなく安全の話です。充電は燃えやすい物のない場所で行い、充電器やケーブルは付属品または指定品を使ってください。本体の膨らみ・変形・異常な発熱に気づいたら、使用をやめてメーカーに相談してください。
NG5:
リコール対象品や素性の分からない製品を使う
リコールは無名メーカーだけの問題ではありません。実例として、2025年1月には大手メーカーのポータブル電源「EFDELTA
1300-JP」について、火災事故の発生を受けた約29,000台規模のリコール(回収・交換)が公表されています(出典:
経済産業省
製品安全リコール情報)。
購入前と購入後の両方で、自分の機種がリコール対象になっていないかをNITEのリコール情報で確認することをおすすめします。また、極端に安い無名品は、事故が起きたときの相談窓口が国内にない場合があります。ベランダソーラーは機器を長期間使い続ける運用なので、国内にサポート窓口があるメーカーを選ぶ方が安全側の判断だと考えています。
NG6:
コンセントに差して家の配線へ電気を流す
パネルにマイクロインバーター(直流を家庭用の交流100Vに変換する小型機器)をつなぎ、コンセント経由で家の配線に電気を流す方式は、日本の現行制度では「差すだけ」ではできません。逆潮流(電気が家から電力会社側へ逆向きに流れ出ること)が発生しうる接続は、設置前に一般送配電事業者への申込みが必要で(出典:
東京電力パワーグリッド「低圧発電側申込みの概要について」)、既存コンセントへの単純接続は認められておらず、分電盤への専用配線が必要と整理されています(出典:
東京都環境局
プラグインソーラーの実装に向けた基礎調査業務報告書)。その配線工事は、電気工事士法により有資格者にしかできません(出典:
e-Gov
電気工事士法)。
制度の問題だけではありません。停電時に発電を自動で止める機能を持たない機器が電力系統につながっていると、復旧作業にあたる作業員に危険が及ぶおそれがあります。海外の動画で見かける「差すだけ」の方式を、そのまま日本に持ち込まないでください。
まとめ
6項目を振り返ります。避難経路(NG1)と落下(NG2)は置き場所の問題、配線(NG3)と熱・充電(NG4)と製品選び(NG5)は使い方の問題、逆潮流(NG6)は制度と保安の問題です。どれも、知らずにやってしまいやすい一方で、設置前に確認すれば避けられるものです。
ベランダソーラーで合法にできる範囲の全体整理(独立型とプラグイン型の違い、制度の最新動向を含む)は、note記事で全文無料で公開しています。
ベランダソーラー入門:
電気のプロが教える「日本で合法にできる範囲」全整理(note)
よくある質問
Q.
ベランダソーラーで一番気を付けることは何ですか?
A.
置き場所です。避難ハッチや隣戸との隔て板を塞がないこと、そして架台ごとストラップで固定し台風前は室内へ取り込むという落下対策が最優先です。
Q.
屋内用の延長コードをベランダで使ってはいけないのですか?
A.
一般的な延長コードは屋内での使用が前提で、雨や結露にさらすとトラッキング現象から発火する恐れがあります。配線器具を屋外に持ち出さず、ケーブルだけを室内へ引き込む構成が安全です。
Q.
ポータブル電源はベランダに置いたままでもよいですか?
A.
おすすめしません。リチウムイオン電池は高温で劣化が進み、事故のリスクも上がります。本体は直射日光の当たらない室内に置いてください。
Q.
パネルをコンセントに差して家の電気に使えますか?
A.
現行制度では「差すだけ」はできません。電力会社への申込みと、電気工事士による分電盤への専用配線工事が前提になります。
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